国の文化審議会による車で3日、寒北斗酒造(嘉麻市大隈町)の「店兼主屋」「安政の蔵」「仕込蔵」の33件が登録有形文化財(建造物)に選ばれた。
江戸時代に宿場町だった大隈地区の繁栄を今に伝える点などが評価され、同市で初の登録。
矢野朋子社長(27)は「地元の人たちの支えがあって酒蔵を残すことができた。町の一員として大切に守り続けたい」と喜んでいる。
県文化財保護課によると、今回答申分を含めると登録有形文化財(建造物)は県内に134件あり、寒北斗酒造 (3件)のほか、福岡市の石蔵酒造の「博多百年蔵」(2件)、宗像市の勝堂酒造(2年)が現在も酒造りを続ける。
うち建造が江戸期までさかのぼるのは、寒北斗酒造の店舗兼主屋と安政の蔵だけという。
寒北斗酒造は1719|(享保1)年の創業で、「松尾屋」「大酒造」「玉の井酒造」と号を変えてきた。
江戸後期には大隈町の御茶屋(本陣)としても使われ、福岡県10代主の黒田斉清や、測量家の伊能忠敬が滞在した記録も残る。
建物の価値が認められたのは1970年ごろ。経済成長に伴って取り壊される建造物が増え始め、貴重な古民家の調査を続けていた。
建築史学者の太田静六・九州大学教授(当時)から文化財登録を勧められたという。
矢野社長は「資金のある蔵元は相次いで近代的な設備に建て替えた時代、私たちは修復を重ねて老朽化をしのぐしかなく、おかげで建物は残ったが、文化財にしようなんて余裕もなかった」と振り返る。
文化財申請の準備を始めたのは約3年前。社長引退を考えるようになり「文化的な価値を公に認めてもらうことで、水続的に町の歴史の一部として、社員だけでなく地域からも大切に扱ってもらえるのではないか」と語る。
当初は江戸明建造の洋のみ申請を予定していたが、視察した文化庁職員が仕込蔵(1934年築)についても、室内空間に柱を立てない西洋の建築法「キングポストトラス」が用いられている点を評価。
「地方の大工も先進技術を作的に取り入れていた証し。酒造所の変遷を語る上で欠かせない」と追加申請された。
嘉麻市の赤間市長は「国のお墨付きをもらったことは、市が取り組む観光振興に大きなチャンス。PRなどで連携したい」と歓迎。
矢野社長は「まずは地道な酒造りを続けることが大切。小さな蔵なので別の見学受け入れは壁しいが、できる部分で市などと協力していきたい」と話している。
糸山信著 西日本新聞2015年3月14日付朝刊より
嘉麻市の寒北斗酒造の店舗兼主屋、安政の蔵、仕込蔵が国の登録文化財とされた。 嘉麻市では初の国登録文化財で、喜ばしいニュース。
中でも仕込蔵は、西洋の技術を取り込んだキングポストトラスという小屋組み。 日本の建物は縦と横の柱と梁により組み立てられるのが一般的で、斜め方向にトラスを組む事は明治維新以前まで少なかった。 トラスを組むことで、耐震強度をより増強させることから、明治の後半以降から公共機関の建物などを中心に取り入れられてきた技法。
また一つ地域の資産として国から認められたところは大きく評価すべき。 この一方で国登録文化財の活用が課題となる。 筑豊にも国が認める価値ある文化財が増えた。つい先日は福智町の城山横穴群が国の史跡となり、史跡公園としての整備も完了したとか。
認められたはいいが、その活用は地域の人々の手腕にかかっている。 このような文化財どうしを、共通するところで結びつけ、一つのストーリーを創りアピールするなど、やれるところはたくさんある。
筑豊のバラエティーあるストーリー、それは意外な発見や魅力に溢れたものとなるかもしれない。
国が認める価値が忘れ去られてしまわないように、定期的に公開やウェブを通じた情報のアップロードを心掛けたいものですね。
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