地方創生へのアプローチ、里山資本主義を探る

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今回は、地方創生と言われて久しくなりますが、その具体的なアプローチのひとつとして「里山資本主義」についてお話したいと思います。

日頃から提案している「企業活動による地方創生」を具体的に実践し、田舎といわれた生産世代の減少が続く地方に一つ一つ活気を作っていくにはどのような方法があるのかを考えてみましょう。

里山資本主義とは?ここだけの提案

まず、里山資本主義とは何かを定義します。従来の資本主義とは、資本による市場原理に基づいた経済システムと端的に表現できますが、里山を資本ととらえてそれを活用するのを基本スタンスとするのが里山資本主義と定義します。

それは、理想とするビジョンとして自国内、圏域、特定地域で自給自足と内需による地域資源の開発に重点を置き、地方を活性化させる経済システムの構築があります。現在、過疎化・少子高齢化問題が叫ばれている中、都市圏への人口と資本の流入によって生じた〝光と影〟の中で、その影の部分に焦点をあてる考え方として、世界各国でにわかに注目されるようになりました。

里山資本主義の主な目的は、地方の内需拡大、地域資源の活用による自給自足の促進、持続可能な生産・消費活動の推進、そして地方に住む人々の雇用機会の創出です。

これらの目標は、地方に住む人々の生活を向上させるとともに、海外から輸入に依存してきた体質から、自立した体質を目指しつつ世界経済の物価変動などの影響を最小限とすることを目的としています。

これら目標を達成するために、地元産の製品を生産するビジネスへのインセンティブ提供、中小企業の資金調達を支援するプログラムの作成、有機農法による農家の支援、再生可能エネルギーへの投資、地元の人々のコミュニティ意識の促進に焦点を当てた観光イニシアティブの奨励、地方での移動を容易にするインフラプロジェクトへの投資などの戦略が実施されています。

これら一連の戦略をもと内需拡大や自給率向上を目指すとともに、斬新なアイデアやアプローチで地域経済の活性化を図る地域づくりを指すのがここで言う「里山資本主義」です。

過疎化・高齢化の解決策としての里山資本主義

過疎化と高齢化の問題、これは世界の多くの国で懸念されていることで、人々は長生きし、子供を産むことが少なくなってきています。

この2つの要因が重なることで、多くの地域で人が減り、その地域が社会的・経済的な問題を抱えることになります。この問題に対処するため、一部の国では、内需拡大や自給率向上を目的とした地域開発政策が実施されています。これには、特定の地域に進出する企業に対する減税措置や、若い夫婦が子供を多く産むことに対する奨励措置などが含まれます。

こうした施策は、地域経済を活性化させるとともに、その地域で家庭を持つことができる新しい人々を呼び込むことにもつながります。

こうした中、里山資本主義と明言していないものの、持続可能な開発による地域活性化という解決策を模索する国・地域も出てきています。農業、漁業、手工業などの伝統的な産業を中心に、自然環境を破壊することなく、地域社会にお金を還元する雇用を創出することで、消滅する集落を減らし地域のコミュニティを維持していこうという試みが多方面にみられます。

飯塚市街地忠隈のボタ山

この一方で、都市化によって人口過密、交通渋滞、物価や地価の高騰、納税額の負担増など、都市社会からも里山指向を持つ人々も増えてきました。新幹線通勤などにみられるように、暮らしの中心を職場とは別として、緑豊かで教育、医療も適切に整備された地域に置くという指向性も目立つようになりました。

過疎化と高齢化、そして地域間不均衡がなぜ今世界中で大きな問題となっているのか、また、地域開発政策や里山資本主義などの革新的なソリューションによって、この問題にどう取り組むことができるのか、その意義をあらためて認識してもらえれば幸いです。

資本主義に対する里山資本主義の存在とは?

過疎化、少子高齢化対策として、内需拡大、自給率向上を目指した地方創生が不可欠ではないでしょうか。 

まず、日本の現状を見てみましょう。少子高齢化による過疎化など、深刻な問題に直面している。総務省の最近の調査によると、日本の自治体の5割以上が「過疎地」に分類されています。このため、雇用の喪失や公共サービスの弱体化など、経済に大きな影響を及ぼしています。

こうした問題へのアプローチとして、内需拡大や自給率向上を目的とした地方創生戦略が不可欠となってきます。

これまで資本によって、ヒトとモノが大都市圏に集中し、これがために地方、田舎が経済圏としては縮小するという歴史をたどってきました。

大都市圏に集中したヒトとモノは、現代資本主義の象徴的なものかもしれません。しかし、先進国と言われいる一方で、経済成長は低迷。大都市、大企業が牽引してきた経済成長もここが限界なのかもしれません。

ということは、逆説的に考えると大都市、大企業が輝かしいばかりに作り上げた繁栄の影となってしまった地方、田舎に、さまざまなスキがあるのではないでしょうか?

例えば、

・大都市圏にはない魅力的な観光地づくりによる観光振興

・大企業がやろうとしていない里山を資本ととらえた経済活動

・地方にある地場産業や中小企業、ベンチャー起業などの育成

・田舎ならではの教育や医療への投資

・地方に進出するベンチャー企業や起業家へのインセンティブ

などがあげられます。

これらの施策は、雇用を創出するだけでなく、人々が故郷や住みたい地域に密着しながら、自己成長の機会を提供することにもつながります。

別な見方をすれば、都市問題として顕在化している、過密人口の抑制、交通渋滞緩和、生活物価高騰の防止などにもつながってくる可能性も開けてきます。

さらに、地域の特性を生かした経済活動の促進も重要です。例えば、有機農法による持続可能な農業の確立を目指し、経済的・環境的に貢献し、地域社会の生活の質を高める取り組みを行っている都道府県があります。

少子高齢化に伴う過疎化問題を解決することは、必ずしも必要なことではないかもしれません。

ですが、現在のような低成長時代をより良い暮らしを実現させるためには、都市部で起きている問題課題解決を見据えた上での内需拡大、自給自足に重点を置いた地域振興策が近道のように思われてきます。

低成長時代における失われた20年、あるいは30年とは、資本主義の発展過程で招いた弊害と言えます。その弊害を除去する上でも、里山資本主義という対局に位置する概念を持って、都市と地方に相乗効果を求め、地域の繁栄と独自の文化・伝統を次世代に引き継ぐことができるのではと考えています。

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