ドキュメンタリー 竹林は宝 〜放置竹林は今〜

Blog 筑豊見聞録
整備された竹林

古くから日本の山々は貴重な資源だった。今でも変わらずにその恵を預かることも少なくないが、その多くは放置され荒れ果てたところが目立つ。今回はその山にクローズアップし、特に放置された竹林が生み出している現状をみて、私たちにできることは何か考えてみたい。

生態系、自然環境の変化

生い茂りやがて放置された竹林は、木々に実る木の実や山菜をはじめとする山の幸を追いやってしまう。竹はその繁殖力の強さで、他の木々を圧倒するほどの高さや密集率となり、地表面には苔やカビなどごく限られた植物が生育できるくらいに、山を独占的に支配するようになる。

森の恵みにあやかっていたのは、人間だけではない。森に棲むイノシシやシカなども同じ。次第に食するものが少なくなった森から離れ、人里にそれを求めてくる。つまり、山林を放置してしまったがゆえ、森に棲んでいた小動物たちが食に困る原因を生み出した。

いわゆる獣害として私たちを悩ませている原因は、突き詰めれば山が荒れてしまったことにたどり着く。そして、その原因の一端が私たちのライフスタイルにもあることに気づく。

獣害対策のワイヤーメッシュ

日本各地の田畑にはワイヤーメッシュなどが張り巡らせられ、作物を獣害から守る対策がなされた。その反面、美しかった日本の田園景観が損なわれてしまっている。人と山が関わることをしなくなったために。

そして獣害は時に、人々に襲い掛かる場合もある。野生のサルの他、イノシシやシカなどが道路に飛び出すこともあり、交通事故につながった例も増加傾向となっている。こうした影響も少なからず、放置竹林が森の木々を追いやってしまっていることが関係している。

襲いかかる竹林、「竹害」となって

土砂崩れを起こした放置竹林

そして獣害は時に、人々に襲い掛かる場合もある。野生のサルの他、イノシシやシカなどが道路に飛び出すこともあり、交通事故につながった例も増加している。

一方山中の竹は、地中に地下茎という植物の根に相当するものを張るが、長くても50cm程度でしかなく、地中深くまでには至らない。ということは、木の根に比べ不安定であり、集中豪雨などによる大量の雨によって容易に流されやすくなる。

日本各地に頻発する近年の集中豪雨は、各地で甚大な被害を受けたという報告例も多くなった。この中には放置された竹林が原因と考えられる場所も含まれている。

それだけではない。宅地の敷地内に放置された竹林も、隣接する住宅に倒れ込んだり、塀や壁に穴を開けたりしてしまうこともある。最近は至るところで空き家問題が顕在化しているが、この問題の中にも放置竹林が関与している場合が多い。損害賠償となった例も見られるようになった。

山を独占的に占領するかのように広範囲に広がった竹林、今や以上のような「竹害」となって私たちの暮らしの脅威となっているのが現状だ。

家屋へのしかかる竹

国も力説「竹の利活用推進」

竹林は放置することで私たちの暮らしに危険を生み出すという部分は、国においても重要視され、むしろ危機感ですら覚えるところ。

林野庁が平成30年に公表した「竹の利活用推進に向けて」によると、森林に占める竹林の占有面積が顕著なのは、九州、中国地方とした調査結果を提示している。

その上で「竹やたけのこ生産等を通じて適切に管理されている竹林がある一方、管理がされていないことから、竹の生産力が低下した竹林の増加や竹林と接する土地の管理もされないことによる里山林等への竹の侵入が生じている。」という所見を明記している。

また、竹の繁殖力と森林内での影響については、「大きいもので高さが20m以上にもなることから、侵入した場所の植生より竹が高くなる場合には、竹より高さが低い樹木が衰退し後継樹も育たなくなり、竹が優占することとなる。このように、竹が優占している森林では、植物種の多様性が大きく損なわれるとともに、森林として有している様々な公益的機能の発揮に支障を生じることも懸念されている。」

森林機能の低下は、先述のとおり獣害、自然災害という形となることも多いため、国は竹林利活用を提唱している。

例えば、竹炭、竹酢液、パルプ製紙、バイオマス燃料などが挙げられており、先進事例として繊維や樹脂と同等利用を目指しているバイオマス・プラスチックや、鋼鉄並みの強度でありながら鋼鉄よりはるかに軽量なセルロースナノファイバーという新素材にも期待を寄せている。

今こそ見直したい竹林

「竹害」という現状をお分かりいただけたと思う。この一方で手間はかかるが竹林は、切り出して資材として活用できる。このことはこれからの未来に大きな貢献になるかもしれない。国も少なからず期待を寄せる、地方に、地域に、田舎にあるものを資源として見直し、住環境の整備と地域資源活用を通じた地域づくりの新たな枠組みが生まれるかもしれない。

しかし、これまでに習慣づいた私たちのライフスタイルを、大きく変えるほどの認識に至っていないのも課題である。食物連鎖のように、山中から竹を資材として活用し、それが私たちの暮らしを支えるというサイクルづくり。今私たちができることから少しずつ始めていきたいのが、放置竹林の整備活用ではないだろうか。

「竹害」に晒されて悪影響を被るより、古くから行われてきた自然との共生をもう一度考え直してみる必要が、今この時期に来ているのかもしれない。次では竹林整備に関する情報をお伝えします。

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