2021年上野焼春の窯開き 城之窯 城野豊三さんにプレインタビュー

Blog 筑豊見聞録

上野焼の窯元さんを訪ね歩いて今回は4人目となります。このたびは上野焼協同組合の常任理事でもある、城之窯の城野豊三さんにお話を伺ってきました。

異色の経歴で現在は窯元となった城野さん、国の伝統的工芸品、現代美術に携わる中で、今の心境を語っています。これからの上野焼の展望についてもお話をいただきました。

城之窯から春の窯開き、陶器祭りへの出品予定の作品について

今年は組合としての取組として、小皿をメインにした展示会を予定しています。そこを主に湯飲みや大皿を組み合わせていき、同じ色(釉薬)でも土によってこれだけ色が変わるというものを考えています。

このブルーの色は、去年くらいからやりだしたもので、できれば(商品として)長続きさせていければなと考えています。今回陶器祭りの時にいろんなお客さんにみてもらえればと思っています。

技術的には上野焼の緑釉と同じ銅の成分を含んだものですが、焼き物の土によってはこれだけ発色が変わるところが特徴です。

城之窯としての特徴や技法、こだわりのポイントは

技法的にはそんなにこだわってはいませんが、素朴さというところを浮かべて、絵心もありませんから自然釉をつかって、藁灰や炭などから得られるものを作っています。

やっぱり1日1日、毎日普段から使うものですから、毎日見てもらってよろこんでもらえるもの、そういう器づくりを心掛けています。

これからの上野焼について、そして目標について

今、後継者不足というのがあります。それがいちばんの難問でして、自分の後何年かしたら還暦になりますので、それ以降となってくると若手の方がもう少し増えてもらいたいと。

話を聞くと地域おこし協力隊など、そういった制度があると聞きましたので、上野の方に移住してこっちの方で作りながら住んでもらえるとか。そういう方がいてくれれば、こちらはもう大歓迎で対応したいなと思います。

そしてもう一つは、上野焼の多彩な釉薬をもとに、もともとは茶器であることもありますし、そこは切っても切れないものですので、そうしたものも残しつつ新しい作風を作っていく。

そんな中で若い方々にも加わっていただいて、自分たちも茶陶を少しづつ勉強しながら取り組んでいきたいと思います。

元々は相撲、力士の方だったとか

日本相撲協会の理事長をしている八角親方、元北斗海さん、あの方の一つ下昭和38年生まれで、私は昭和39年生まれで、その時の町長さんが応援してくれたこともあり入門しました。

その後2年くらいして膝を悪くして、お医者さんのお話では「このまま相撲を取れないことはないけれど、その先どうなるかはわからんよ」と言われました。

そういう状況にあるのならば、(地元に)帰るのもひとつの手ではないかと言われ、それだったら相撲ばかりが人生じゃないからと思い帰ることにしました。

帰ってきて当時の町長さんから、(以前あった)共同窯というところの理事もしていまして、立ち仕事のできない自分を紹介してくれました。

当時は160~170㎏の体重がありましたし、窯元さんのところへ修行に行けば座っている暇などないくらいですので、それは難しい。ですが、たまたま自分は運が良かったのか、(共同窯で)仕事をさせてもらえるようになり、いろいろな方から教えてもらいながらやれました。

そこが(城野さんが入って)3年くらいして倒産となって、そこから悪くても我流でいこうと思い、今の仕事となりました。

だいたい、窯元さんに修行へ行くと、そこで習った形があらわれますが、そこは相撲と同じで苦労してもいいから自分の形を作ろうと。最初のうちは重たいし、ブサイクだし、よくお客さんが買ってくれたなと思うようなものばかりでしたが、今はいくらか見てくれは良くなったと思っています。

相撲では縦社会の中で稽古なり、何なりしてきたこともあり、少々のことではくじけないところを養ってきました。そうしたところが今まで続けてこれた、いちばん大きかったところが忍耐でしたね。

相撲は頑張ればその分だけ上に上がっていけるという部分がありますが、これ(陶芸)は商売ですので、やはりお客さんあってのもの。そのため、食べるところに行ってそこで器を持った時の感じをみるとか、小さいからいい、大きいからいいとかいうのではなくて、実際使ってみたら小さく感じたとか、食べる、飲む時にふさわしい重さはどれくらいかなど、この意味では相撲よりこちらの方が難しいです。

「こんな色出してから、こんなのは上野焼ではない」とかお客さんから言われたことは何度かありました。若いころはそれが自分ではわからずにいた時もありましたが、10年くらいしてからあの人が言ってことがわかってきたというのもあります。色ではなく全体的なバランス、最初からこういう形のものにはこんな色合いが似合うというところは、かなり学んだと思います。

例えば、アクロス福岡などでバレンタインデーのお猪口を展示販売に行きことがあります。そのとき、各窯元さんからそれぞれに作品を並べるのですが、何でこれだけ売れないのだろうかと思うことがあります。

伝統工芸どうしのコラボなんかもできるかもしれないと思っています。福岡には博多織や久留米絣(くるめがすり)、小石原焼や八女福島仏壇などがありますが、久留米絣なんかはハンカチのようなものなら贈り物にコラボするのもいいかもしれませんね。

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