美術品としての新感覚上野焼 空間をおしゃれに彩る八幡窯世良彰彦の陶芸

Blog 筑豊見聞録

伝統工芸として400年受け継がれてきた上野焼、それは筑豊のものづくりの代表格の一つとして知られています。そのはじめはもっぱら茶器を生み出し、安土桃山時代から江戸初期に流行りだった茶道の愛好家たちのニーズに応えていました。

長い年月の経過とともに時代のニーズが変化するのに応じて、上野焼も生産する陶器の種類、スタイル、釉薬の取り扱いも変わっていったのでしょうが、その具体的な動向はわかっていないところが多い。

明治になって一時期断絶した上野焼、それでも伝統工芸としての光を失わず復興を遂げ今に至ります。

このような中、受け継いできた伝統の枠にとらわれず、美術としての上野焼を追及している窯元がいます。その方は八幡窯窯元の世良彰彦さん(以下敬称略)。陶芸という立場から焼き物に芸術性を求め、空間を彩るセラミックアートを上野の地から創造しています。

ここでは陶芸作家、日展作家世良彰彦の作品の特徴にふれ、代表的な作風を感じてもらい、入選・受賞歴を含めた経歴をまとめてみたいと思います。

陶芸作家、日展作家世良彰彦さんはこんな方

上野で生まれた現代美術 上野焼八幡窯世良彰彦さんの挑戦

新感覚上野焼とも評される世良作品の特徴

新感覚上野焼をその手に

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マスキングによる装飾

マスキングは、特定の部分を保護し、釉薬や色付けから守るための技法です。これは、釉薬がかかることで陶器の表面に模様やデザインを作るため、また釉薬の色を限定的に適用するために使われます。

釉薬をかける前に、特定の部分をマスキングして残りの陶器表面を保護します。これにより、釉薬がかからない部分に模様やデザインを描いたり、釉薬の色を分けたりすることができます。釉薬の境界線を鮮明に保つために、マスキングテープや特殊なマスク材料を使用します。

複数の釉薬層を使って作品に深みや立体感を与える際にも役立ちます。一度釉薬をかけて焼いた後、特定の部分をマスキングして、別の釉薬をかけることで、多彩な効果が生まれます。

一部エッジングのような効果が得られる側面もあるため、紋様が立体的に浮かび上がるような装飾が世良作品の特徴です。

また、基本的に世良作品はロクロを使わずに手捻り、あるいはたたらという技法で持って成形されるところも大きな特徴です。

手捻り、たたらによる成形

一方たたらは、粘土を板状にして、お皿やカップ、その他様々な形に成形する技法をタタラ作りと呼ばれます。板状にするにはタタラ板を使って同じ厚みにスライス、または、のし棒を使って伸ばした粘土を貼り合わせたりするのが一般的です。

参考➡https://youtu.be/8RD46jHo7rc

ともにろくろ成形では難しい形を自由に創作するために、窯元がこだわっている点がこの手捻り、たたらによる成形作業です。

以上2つの主な技法を用いてできるのが世良作品であり、今までにない上野焼のスタイルからそれは「新感覚上野焼」とも評されるものです。どれもこの世に二つとない一点もので、お部屋を彩るオブジェからカップ、お皿、どんぶりに至る生活用具まで、窯元の独創的な発想と使い手から見た扱いやすさがあります。

主なスタイルについて

彩華

手捻りで土紐を積み重ねる、あるいはたたらによって陶板を貼り合わせることによって、器の形を成形します。その器面を細かく削り出し、素焼きした後に1mmのマスキングテープによって紋様を描き出します。

その上から色化粧土を入れた後、テープを剥ぎ取ることで細かな紋様を表出します。

仕上げにはつや消しの釉薬を霧吹きによって吹き付け、再度焼成することで完成する。以上、これ以外にも細かな工程がありますが、手間暇かけて一つの作品になります。

彩華とは、窯元が第30〜33回の日展(1998〜2001年)に出品の際、基本としていたテーマということです。

風紋

器形、器面の成形までは彩華と同様ですが、紋様の表出に大きな違いがあり、最終的な作風も風が流れるような印象を与えるところが、大きな特徴の風紋です。

風紋とは本来は砂漠の表面にできる、風であしらわれるように自然にできあがった紋様のことを言います。窯元はこれをモチーフとして、陶芸の紋様に採用したものです。

器面に紋様の素となる彫り込みを行い素焼きします。その後、ラテックスマスキングを施します。

ラテックスマスキングとは、絵画や工芸、DIYプロジェクトなどで使用される一般的な技法です。これは、ラテックス製の特殊な液体を使って、特定の部分を保護し、塗料や染料などが付着しないようにする方法です。

ラテックスマスキングは、異なる色やテクスチャを組み合わせて作品を制作するために使用され、特に水彩画やポスターカラーで一般的です。風紋にはバージョンが合計4つあるということですが、こちらは窯元が第23〜39回の日展(1991〜2007年)に出品の際、基本としていたテーマで、初入選から取り入れてきたものです。

椿模様

器形、器面の成形は、彩華、風紋と同様で、素焼き後にあらかじめイメージデッサンしておいた椿の絵を器面に転写します。

そこで器面に示された線を、一本一本丁寧にライン取り、マスキングテープで必要箇所にのみ色化粧土を入れます。その後にテープを剥がして、つや消し釉薬を霧吹きして再度焼成することで出来上がる作品です。

このテーマは、日展改組新第2〜6回(2015〜2019年)に出品した時のテーマだそうです。

大まかな説明ではありますが、かなり一点一点に込めた匠の技を実感していただけるのではないでしょうか。その匠の技、それがどれほどの評価を得ているのか疑問な方も多いと思います。それではここで、日展作家世良彰彦の経歴からその評価を見てみましょう。

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陶芸作家世良彰彦陶歴

昭和35年 福岡県田川郡赤池町上野に生まれる

昭和57年 京都芸術短期大学陶芸専攻科修了

平成3年第23回日展初出品初入選 以後28回 入選

第30回日本現代工芸美術展初出品 初入選 以後11回連続入選

第40回記念日本現代工芸美術展「現代工芸賞」受賞  以後本会員出品

現代工芸九州会展 

大賞「現代工芸九州会会長賞」受賞

「福岡県知事賞」受賞 2回

「佐賀県知事賞」受賞

「宮崎県知事賞」受賞

「鹿児島県知事賞」受賞

「福岡市長賞」受賞

「佐賀県立九州陶磁文化館長賞」受賞

日本陶芸展 入選(賞候補)2回

朝日陶芸展 入選

セラミックアートFuji国際ビエンナーレ2004奨励賞

セラミックアートFuji国際ビエンナーレ2008「スペイン大使賞」受賞

西日本陶芸美術展「大賞」受賞

「大分県知事賞」受賞

「琉球新報社賞」受賞 他5回入選 以後招待出品

九州山口陶磁展「西日本新聞社賞」 受賞 他2回入選

有田「世界·炎の博覧会」日韓野外陶芸展 出品

福岡県立美術館にて 現代造形の構築展出品

京都・静岡・大阪・福山・福岡天神にて個展

田川市立美術館LC「日展会友記念」個展

九州陶磁文化館に常設展示

現在 社団法人 日展会友

社团法人 現代工芸美術家協会 本会員 審査員

現代工芸美術家協会 九州会 委員 審查員

さらなる陶芸の創造 癌との闘病とともに

良は、一昨年ガンを発症し絶望の淵にありながら、残された人生をさらに作陶へ取り組むことを決意したそうです。

「生きること」についてその有難さを噛み締める一方、人々の素直な思いを自他ともに認めあう社会、多様化の進む価値観を認め合える社会へと移り変わる、そんな未来を思いつつ世良は作陶に打ち込んでいます。

作陶から40年を超え、さらなる高みを陶芸の世界に、そして美術品としての上野焼を創造する世良をこれからも見守り続けていきますよう、皆さんのご声援、ご支援のほどよろしくお願いいたします。

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