小さな事業のPDCAサイクルビジネス術、その基礎基本とは!?

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PDCA(Plan-Do-Check-Act)は、プロセスの改善と品質管理のためのサイクル的なアプローチを指す方法論です。PDCAは、問題の特定、計画策定、その実施、評価、そして行動(改善の実施)の5つの主要なステップから成ります。

聞いたことはあるけど馴染みが薄い、難しい、あるいはもはや古いなどという声をたびたび耳にします。しかし、基本的な考え方に立ち返ってみると、まだまだ有効なアプローチであることがわかるはずです。

ここではPDCAの基礎基本をもう一度再構築し、あなたのビジネスに有効活用してもらうためのヒントをまとめてみました。

日常生活に使えわれているPDCAの基礎基本

PDCAと聞くと難しい専門的なものでしょ?

いえいえ、実は身近なところにも使われているものですが、横文字でいかにも難しそうに感じられるために、本来はとてもシンプルな考え方であると教える人がほとんどいないのが実情ではないでしょうか?

ここでは日常生活の中にも人々の行動に見受けられる部分があるということから、シンプルなPDCAサイクルの基本的な考え方にふれてみたいと思います。

夏休みの宿題

たとえ話として夏休みの宿題を思い出してください。30日という学校のない日々に、たくさんの課題が先生から渡されたのではないでしょうか?

何ページにもわたるワーク集や作文、小論文、自由研究など、それぞれの地域や学校によってことなるかもしれません。

だいたい決まって遊ぶことに熱中して宿題をしていない人が必ずいました。こうした人を筆頭に、夏休みの終り頃に追い込みで、多くの課題をこなさなければいけなかったという人が、少なからずいたのではないでしょうか?

そして、必ず優等生ともいうべき、余裕の表情で夏休み終盤を迎えていた人もいました。そのサクセスストーリーに、実はPDCAの基本的な考え方があります。

宿題に取り掛かる前に、夏休みのうちに宿題をする日数とその時間、そしてワークのページ数や小論・作文の枚数(例えば原稿用紙3~5枚など)、自由研究に必要な資料集めにどれだけの時間がかかるか、これ以外の細かな課題はどれくらいあるかなど、事前にゴールを見定めた上でそのアプローチにどれだけの日数や時間を必要とするかを明確にしていることをしたという人も多いのではないでしょうか?

つまり、ゴールから考え、スタートからどれだけのギャップがあるのかを知る。こうすることで事前に完成までのロードマップを描く。これは立派な計画(Plan)です。

実際実践(Do)してみると、思ったよりワークが難しくて進みが悪いとか、自由研究の課題が見つからないなど、問題が生じることもあります。

なぜ進まないのかを振り返る(Check)ことで、このような改善(Action)はどうだろうか。こんなアイディアが生まれることで、あらためて計画(Plan)を練り直します。

つまり、夏休みの宿題に困る事のない児童や生徒は、PDCAの基礎基本に則ってやっている場合が多いのだと考えられます。

ダイエット

例えばあなたが3㎏の減量にチャレンジしたいとしましょう。

減量というからには、これまでの日常の中にはないプログラムを組むことで成果につながるのはわかるでしょう。

そのため、自身のダイエット目標を明確にします。これは体重の目標、食事療法の目標、運動目標などを含まれます。また、健康リスクを考慮し、医療専門家のアドバイスを受けることが望ましいでしょう。自分の体質や体力にあっていない方法を無理に進めても、逆に健康を損なうことも考えられます。このようなリスクを回避するため、インストラクターのアドバイスを受けながらする方が効果的な場合もあります。

さまざまな要素を考慮にした上でゴールを見据え、不必要なことを避けつつ、日々続けていけるものや自分の体質に無理のないメニューを事前に検討します。そしてどのくらいの期間取り組んで、目標を達成するのかを考えればダイエットプラン(Plan)の出来上がりです。

そして実際にやってみます。これが実践(Do)となります。1日のプランを実践したところで、体重計に載ってみると、たとえば100g減っている、あるいは増減なしなど、1日の成果を確認することが(Check)になります。

仮に日々 100gづつコンスタントに減っている傾向が確認できれば(これはなかなか稀かもしれません)、単純に30日続けていくことで目標を達成できることになります。

逆に思ったように成果が見られない場合は、食事内容や運動メニューとその実践時間、あるいはサプリなどを活用するなら、自分の体質に合わないものなのかと検討し、次への改善していくのが(Action)になります。

以上、身近な題材をもとにPDCAを捉えなおせば、とても単純な原理によって成り立つことが理解できると思います。そして、PDCAを実践する上で欠かせないのが、客観的な指標を認めるための数値化がとても重要となります。

PDCAビジネス活用法

それでは、ビジネスのさまざまな業種に置き換えて考えてみましょう。

まずは基本的な考え方としてとても重要な要素を、先述の日常生活編でふれた内容からピックアップし、それからケーススタディという形で具体的な内容をみてみましょう。

基礎基本の考え方、ポイント

1.まずは目標と目的を明確に

  …目標はできる限り数値化する

  …目的は、目標を達成することでどんなメリットがあるのかを明確にする必要がある。言い換えれ

   ば、その目標を達成する意義は何か、それがどれほどの重要度を持つのか。

   その行動、目標達成がどれほどの重要度のある目的となるのかで、効果も変わってきます。

2.その目標と現状のギャップを計測

  …現状での作業量や生産数と一日の売上など基礎事項の分析

  …課題解決、目標達成など、最終的な成果によって扱う数値が変わることが多いので要注意。

   つまり、ゴールまでどのくらいのところにいるのかを常に理解しておくための数値化が必要最低

   条件となるのです。そうでなければチェック(Check)と改善(Action)のアイディアが生み出

   しにくくなります。

3.目標と同じくらい大事なのは期限

  …時間軸を決めてその間にどれだけの作業、実践、効果が観測された実践中の実態把握も重要

  …期限内に起きた内容、数値の動向など、できるだけ細かな客観的情報収集が望まれる

実践ケーススタディ1:飲食店の場合

Plan(計画):

原則: 問題を特定し、改善計画を立てる。

具体例: 顧客からのクレームが増えているという問題がある場合、計画は次のようになります。

・顧客からのフィードバックを収集し、最も頻繁に発生するクレームを特定する。

・クレームの原因を分析し、問題の根本原因を特定する。

・顧客サービスの向上や調理プロセスの改善を含む改善アクションプランを策定する。

Do(実施):

原則: 計画に基づいて実施を開始する。

具体例: 改善計画を実行し、新しいプロセスやポリシーを従業員に適用する。たとえば、従業員トレーニングを実施し、新しい調理手順を導入する。

Check(評価):

原則: 実施の結果を評価し、問題が改善されているかどうかを確認する。

具体例: 改善措置を実施してから、クレームの数をモニタリングし、顧客のフィードバックを収集する。これにより、問題が減少しているかどうかを確認します。

Act(行動):

原則: 評価の結果に基づいて行動を決定し、必要な場合に再度計画を修正する。

具体例: クレームの数が減少していない場合、さらなる改善アクションを検討し、計画を修正する。たとえば、従業員トレーニングを強化し、調理プロセスをさらに最適化します。

実践ケーススタディ2:製造業の場合

Plan(計画):

原則: 問題を特定し、改善計画を策定します。

具体例: 製品の欠陥率が高いという問題がある場合、計画は次のようになります。

ルートコーズ分析を実施し、欠陥の原因を特定します。

プロセスの改善ポイントを特定し、品質管理の基準を再評価します。

新しい品質管理プロセスの設計と予算の策定を行います。

Do(実施):

原則: 計画に基づいて改善を実施します。

具体例: 新しい品質管理プロセスを実行します。

製造ラインでの品質コントロール手順を強化し、欠陥を検出しやすくします。

チームに新しい品質トレーニングを提供し、適切な品質標準を実施します。

欠陥の報告とトラッキングシステムを導入し、問題の追跡を容易にします。

Check(評価):

原則: 実施の結果を評価し、問題が改善されているかどうかを確認します。

具体例: 改善プロセスの進行をモニタリングし、品質と効率に関するデータを収集します。

欠陥率の変化を監視し、改善が期待通り進行しているかどうかを確認します。

作業員からのフィードバックを収集し、プロセスの改善点を特定します。

Act(行動):

原則: 評価の結果に基づいて行動を決定し、必要な場合に計画を修正します。

具体例: もし欠陥率が改善されない場合、追加の改善アクションを実施し、計画を調整します。

ルートコーズ分析をさらに深化させ、新たな品質改善のアイデアを特定します。

チームに新しいトレーニングやツールを提供し、品質管理の能力を向上させます。

PDCAサイクルがうまくいっていない場合

  1. 不適切な計画:
    • 問題の適切な特定や現状分析が行われていない。あるいは不十分。
    • 計画が不十分で、目標やアクションステップが明確でない。
  2. 計画の不適切な実行:
    • 実施段階で計画に基づいたアクションが適切に実行されていない。
    • チームのトレーニングやリソースが不足している。
  3. 評価の不足:
    • 評価フェーズで適切なデータ収集やフィードバックの収集が行われていない。
    • 評価基準が不明確で、目標達成の進捗を正確に測定できない。
  4. アクションの不足:
    • 評価の結果に基づいて必要なアクションが適切に決定されず、改善措置が実施されていない。
    • チームや組織が変化に対する抵抗を示し、アクションを実行しない。
  5. サイクルの継続性の不足:
    • PDCAサイクルが一度きりの取り組みとして実行され、継続的な改善が行われていない。
    • サイクルの途中で進捗が確認されないため、問題が未解決のままになる。
  6. コミュニケーションの不足:
  • チーム間や組織内で情報共有とコミュニケーションが不十分で、PDCAの各段階での理解と連携が欠如している。
  1. リーダーシップの不足:
  • PDCAプロセスの指導や推進が不十分で、組織全体でのコミットメントが得られていない。

PDCAは、意外とシンプルな原理から成り立っているものですが、その時の状況や環境によって単純に捉えることが難しくなることも少なくありません。この点がPDCAという簡単な原理を複雑で難しい印象を与えてしまっているのが現実です。

ただ、一つ一つの事象や問題、課題、結果を一つ一つじっくりとみることによって、そもそもがシンプルな原因で生じていることが多いのも事実です。

PDCAでは難しいかと思った時こそ、初心に返って夏休みの宿題を思い出しみてください。実は大きなヒントや見落としていた落とし穴が隠されているかもしれません。

PDCAサイクルのメリット・デメリット(まとめに)

PDCAは組織にとって非常に有用なツールであり、品質向上、問題解決、効率向上などの多くの利点があります。

ただし、実施する際にはコストやリソースの配分、適切なデータの収集や変化など、複雑多岐にわたるケースも生じてくることがあります。

実際に活用している中で、よく見られるメリット、デメリットをまとめてみました。

メリット

  1. 継続的な改善: PDCAサイクルはプロセスの持続的な改善をサポートします。繰り返し実施することで、問題の特定、解決、品質向上などを継続的に行えます。
  2. 組織全体への適用あらゆる組織や業界で使用できる汎用的なツールであり、組織全体に適用できます。
  3. 問題の早期発見: PDCAサイクルに従うことで、問題や課題を早期に発見し、迅速に対処できます。これにより、コスト削減や品質向上に貢献します。
  4. データ駆動の意思決定: PDCAはデータ収集と評価を強調するため、意思決定を客観的にサポートします。感情や主観的な判断に頼らないメリットがあります。
  5. 協力とチームワークの促進: PDCAサイクルは組織内の協力とチームワークを促進し、組織の全体最適化をサポートします。

デメリット

  1. 時間とリソースの消費: PDCAはデータ収集、分析、アクションプランの実行に時間とリソースを必要とします。これは、組織にとって負担となることがあります。
  2. 繰り返しのコスト: PDCAサイクルは繰り返し行われるため、継続的なコストが発生する可能性があります。これにはトレーニング、データ収集、評価のための人的資源が含まれます。
  3. 過度な複雑性: PDCAの実行は一見シンプルですが、複雑な問題に対処する場合、手順やアクションプランの管理が複雑になることがあります。
  4. 抵抗と変化への不満: 組織内の一部メンバーは、PDCAサイクルの変更や改善に対して抵抗を示すことがあります。変化に不慣れな人々にとっては、不満の原因となる可能性があります。
  5. 一般化の難しさ: PDCAは一般的な原則を提供しますが、特定のコンテキストや業界に適切なカスタマイズが必要です。適切な適用を見逃すことがあるため、慎重な考慮が必要です。

特に、現場での作業において、瞬時に判断しなければいけない場合などには不向きで、事業全体を俯瞰して長期的な目で実践と改善を繰り返すことに大きな効果を発揮します。

こうした特徴からPDCAのデメリットを補完する意味で、OODAなどの考え方も生じてきています。

経営戦略などの中長期的計画や、月単位の業務内容の改善、売上向上を目的とした計画などにPDCAサイクルを活用し、現地作業で日々刻々と千変万化する環境ではこれとは違った物差しでとらえ直す。

小さな事業でも適材適所なPDCAサイクルの活用は、そのメリットに応じた使い方をすれば大きな効果を発揮します。この稿から多くの方々の事業改善、業務内容向上に寄与できれば幸いです。

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