商業の街 直方で伝統を守り続ける茶舗前田園 お茶のスタイルを求めて

Blog 筑豊見聞録

明治30(1897)年ごろ、初代前田長吉が博多から直方へと商売の地を移して以来、5代にわたってのれんを守り続けてきた老舗、茶舗前田園。現在は株式会社前田園本店となり、直方の街で伝統の味と香りと製法を守りつつ、あたらしい取り組みもはじめたと聞き取材させてもらいました。

「最近はお茶を急須で煎れるということが、若い人たちを中心にしなくなって、ペットボトルでお茶を愉しむスタイルが定着してね…」とは前田園本店代表取締役社長の前田敏さんの声。5代目の社長として最近就任したばかりとのことで、フレッシュ感に満ちたその姿からは想像もしなかったお話がありました。

多様化した人々のライフスタイルに合わせるように、あたらしいスタイルを日本茶から生み出していきたいという思いが、インタビュー中の前田社長からひしひしと感じられました。そのインタビュー内容は、別の機会にしたします。前田社長の夢とともに、あらたな地域づくり、筑豊地方の新名所としてのねらいなど、語り尽くせない思いをご期待ください。

さて、今回クローズアップしたいのは、日本茶による街カフェ

もともと株式会社前田園本店は、製造・卸売を主な事業としてきましたが、このたび工場直売所を設けることで、お客様との距離を縮め、より深く日本茶という文化にふれ理解してもらいたいという目的をもとに新事業に着手しています。

カフェを思わせるような空間の中に、和柄のラッピングがところ狭しと並ぶ。先日オープンしたばかりの工場直売店「KANECHO MAEDAEN」は、より多くの人たちに日本茶の文化を感じてもらうためのスペース。あわせて日本茶に関わる茶器やさまざまなグッズが、店内に華を添えている。

炭坑が勃興し、筑豊炭田の中心地として、ヒト・モノ・コトが集積した明治期の直方に、博多から店を移した当時から、お茶は贈答品として頻繁に活用された。華やいでいた当時の街にあっては、なおの事人々から買い求められたことだろう。これは今の時代も変わらず、日本文化の基本的な部分である。それは冠婚葬祭などをはじめ、私たちの日常生活のあちこちで目にすることからも理解できるところ。

ペットボトルで愉しむお茶は手軽だが、「急須でお茶を煎れる」ことを見直し、お茶を通して人々の語りあいを深め、コミュニケーションを豊かにする。そんな思いが直売店のスタッフの人たちから感じられ、店内はゆったりとしたくつろぎの空間に満ちていました。

「お茶の葉ひとつの解説にはじまり、それがお茶のやり取りだけでなく、スタッフとお客さんとの距離を身近にして、たとえお茶を買っていただかなくとも来たお客さんには何らかの“おみやげ”が渡せる」そんなお店を目指しているそうです。

旧前田園本店(国有形登録文化財)

 今後は、パフェといったスイーツや和菓子とのコラボを探求し、日本茶と相性のいいメニューの開発、商品化などを目指しているそうです。また、長期的な視野で旧前田園本店(国有形登録文化財)を活用し、本格的な日本茶のカフェを直方の街にオープンできるよう事業展開していくと前田社長からいただきました。

シャッター通りとも呼ばれ、閑散としている商店街が見直されつつある今、人と人どうしが和やかな雰囲気のもとコミュニケーションを深め、活気を取り戻すきっかけになることに…あらたな筑豊づくりに目が離せない株式会社前田園本店の今後にご期待ください。

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