観光列車「ことこと列車」からみる筑豊の風景とその周辺

Blog 筑豊見聞録

食事と沿線風景 ゆったり楽しむ〜平成筑豊鉄道「ことこと列車」に乗る(西日本新聞5月11日付朝刊より)

車窓の風景と食事をゆったりと楽しむ平成筑豊鉄道 (平筑、福岡県福智町) のレストラン列車「ことこと列車」が人気だ。JR九州の豪華寝台列車「ななつ星in九州」を手掛けた工業デザイナーの水戸岡鋭治さんがデザインした車両で、フレンチを堪能できる。4月上旬、気分転換に乗車した。(丸田みずほ著)

ゴージャスな車内と贅沢料理が旅に華を

午前1時すぎ、直方駅(同県直方市) のホームには多くの乗客が集まっていた。

真っ赤な列車と記念撮影したり、カメラを構えた「撮り鉄」がいろんな角度から何度もシャッターを押したりして、わくわく感に包まれていた。

さっそく乗車し、まず目を引いたのは天井の鮮やかステンドグラスと天川組子のついたて。人気の理由の一つという豪華な内装に、しばらくうっとり。「ことこと走る、ことこと列車でごゆっくりお過ごしください」。軽快な音楽に乗って発車。時速15~40kmで約3時間半の旅が始まった。

しばらく走ると標高901mの福智山が見えた。麓には長い歴史を持つ上野焼の窯元がある。

間もなくして、沿線9自治体の野菜などが使われている「ことことボックス」が提供された。料理は福岡市の人気シェフ福山剛さんが監修している。「食材は季節によって変わります」と乗務員の女性。タケノコのスパニッシュオムレツやハマグリと菜の花の白あえなど、どれもおいしくあっという間に平らげた。

♪信ちゃん 信介しゃん車内に音楽が流れ、外を見ると、五木寛之さんの小説「青春の門」の冒頭に「異様な山」として出てくる香春岳がそびえ立っていた。

列車は山を周回した。

上野焼の器に盛られた筑豊にちなんだ石炭リゾットや和牛ほほ肉煮込みなどの昼食を楽しんでいると、ハッピーバースデーの歌が聞こえてきた。

記念日に、一人旅に、楽しみ方いろいろ

「記念日に乗車する人が多いですよ」。
ことこと列車のチーフ、佐々木秀和さんによると、この日は誕生日や退職祝いなど5組が乗車していた。

「おめでとうございます」。車内は盛大な拍手に包まれた。 古希祝いで乗車したという夫婦が、特別仕様のデザートを手に満面の笑みを浮かべていた。

車内には思い思いに過ごす人たちの姿があった。車窓から見える風景や豪華な内装に向かい、何度もカメラのシャッターを押す女性。「じっとしているのはもったいなく、動き回ってしまう」。列車に乗るのが好きで、この日は兵庫県から夫婦で訪れたという。

夫婦や家族連れが多い中、一人旅らしき男性を見つけた。九州市の会社員小林綾一さん(55)は単身赴任先での小旅行が趣味という。

「コロナで外出を控えていたけど、もう限界。感染予防をしっかりしてきた。景色も良くて料理もおいしく、一人旅は最高」

旅は終盤に差し掛かっていた。車窓から見える新緑がまぶしく、心に解放感をもたらしてくれた。

ほどなくして、石坂渓谷(同県赤村) の風景が見えてきた。「石坂トンネルは明治28年に開通した九州最古の鉄道トンネルと言われています」。

運転士がアナウンスすると、乗客は車両前方に移動しカメラを構えた。れんが造りのトンネルは国登録有形文化財になっているという。そんな貴重なトンネルがあると初めて知った。

途中、金田、田川伊田、油須原の各駅に停車して休憩しながら、午後2時30分ごろ、終点の行橋駅(同県行橋市)に到着した。乗客は列車との別れを惜しむように記念撮影していた。3時間半の旅は長そうだと思っていたが、あっという間に終了した。今度は家族や友人と乗ってみたい。(以上前掲新聞記事より)

「ことこと列車」沿線フォトギャラリー

ここでは補足として、へいちくの車窓から眺められるみどころや、途中下車して見に行けるスポットを紹介したい。

「ことこと列車」は、直方駅を出発して田川伊田駅間を一往復した後、行橋駅を目指してゆっくりと車窓をたのしむ旅を演出する。この間途中下車できないが、個人やグループで「1日フリーきっぷ」を活用する事で、また違った楽しみ方もできます。

直方駅を出発すれば左手に福智山を遠くにのぞむ。田川伊田駅までの長い区間、その勇姿を目にする事ができます。これは車窓からも楽しめます。

上金田駅あたりから勾金駅にかけては、香春岳をさまざまな角度で車窓に飛び込んできます。セメント工場と重なり合う様子は勾金駅付近でしかみれないため、この辺のポイントは要注や意。大坂山や田川市石炭記念公園の二本煙突と竪坑櫓も、車窓からでは限られた時間しか見れないので、見逃さないようにしたいところです。

筑豊唯一の村、赤村は下車してゆっくり見てもらいたいポイントが2つ、油須原駅と石坂トンネル。ともに明治期の鉄道遺産が現役で活躍するレアな存在です。

石坂トンネルは、源じいの森温泉の近くにありますが、そこからではトンネルが一つしかみることができませんが、実はトンネルが二つ続きます。この様子は「ことこと列車」からでは見ることができない上に、トンネルが短いためあっという間に通過してしまいます。

こうしたポイントも楽しみたいという方は、ぜひ「1日フリーきっぷ」を活用してはいかがでしょう?

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