『しっくい』で守る人々の暮らしと未来 田川産業株式会社の挑戦

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かつて筑豊には、黒ダイヤ、白ダイヤという言い方がありました。これを知っている人も少なくなってしまいましたが、黒ダイヤは石炭、白ダイヤは石灰を表す表現です。

つまり、鉱物が地場産業を支え、糧となり繁栄していることの形容で、このような言い方が生まれました。

今回は、黒ダイヤは炭坑の閉山でみられなくなった一方、地場産業として白ダイヤを活かして活躍する企業を紹介いたします。白ダイヤで新たな製品を世に送り出している、田川産業株式会社についてスポットを当ててみましょう。

田川産業株式会社について

田川産業株式会社は、大正13(1924)年に創業された企業であり、日本が唯一自給可能な石灰資源の応用と漆喰の技術開発を、コアテクノロジーとして革新的な製品を提供しています。

漆喰は環境に負荷のない石灰に海藻や植物繊維などの自然素材を複合したエコな材料であり、建築に施工することで調湿・消臭・抗菌・不燃性といった優れた特性を発揮します。

田川産業は漆喰の有用性という信念を基に、環境への配慮と健康福祉への貢献を重視しています。また、同社は欧米発の環境認証である『C2C(Cradle to Cradle)』(※1)を取得し、漆喰から新素材のしっくいセラミック「Limix」、現代しっくい『Limore(リモア)』まで地球に優しい製品群を展開しています。

※1C2C(Cradle to Cradle)とは、循環型製品で、再利用できない廃棄物を一切出さないモノづくり

主力製品とサービス

石灰はそもそも貝殻や珊瑚などを焼成することによって生まれる。天然由来100%の原料、かつ土に返っても後の影響はない。私たちの暮らしには、消石灰や漆喰という品物で目にすることも少なくない。

このうち同社の主力製品は漆喰であり、製造・処分時の環境破壊が少なく、カルシウムが生物環境・地球環境で循環するという特徴があります。

田川産業は、その技術力を文化財の修復において遺憾無く発揮してきました。

その「分析力・再現力・対応力」を重視し、徹底的な調査や分析を通じて当時の材料や製法を再現しています。特に、海の近くなど環境や下地の材質に合わせた材料選定や復元作業を行うことで、修復物の耐久性や適合性を高めています。

こうした考えのもと、修復してきた文化財には、大阪城(大阪府)や出雲大社(島根県)、道後温泉本館(愛媛県)、大浦天主堂(長崎県)などが挙げられます。

さらに、新素材である「Limix」現代しっくい「Limor」は自然素材から成り立ち、CO2抑制が可能な製造工程や光触媒を利用した空気浄化技術などが特長です。これら製品は環境への負荷が少ないことが評価されています。

しっくいセラミック『Limix』(ライミックス)

建築家としての見識からすれば、Limixは自然素材を活用した革新的な建材であり、以下のような使い方でユーザーのニーズを満たせるのではと期待を寄せます。

なんと言ってもその最大の特徴は、不焼成つまりタイルなのに焼き入れていないということ。

独自技術である超高圧プレスによって成形されたセラミックは、製造工程の燃料を大幅に減少させる上に、石灰の多孔質という特徴を損なうことなく仕上げているのです。

このため、「調湿・抗菌・消臭・不燃性」というメリットをそのままに、建築物の内外装に活かせるのです。そのメリットをも少し詳しく見れば、以下のようなものが挙げられます。

1. 環境に配慮した建築物の設計

  LimixはCO2抑制空気浄化技術などの特性を持つため、環境に配慮した建築物の設計に活用することで、エコフレンドリーな空間を提供できます。

2. 健康的な居住環境の創出

  Limixの抗菌・消臭効果調湿性能を活かして、健康的な居住環境を実現することが可能です。特に高品質な空気環境を求めるユーザーに適しています。

3. デザイン性と機能性の両立

  Limixは現代建築に適した性能や工法、意匠に合わせて開発されており、デザイン性と機能性を両立させることができます。建築物の外観や内装において、美しさと実用性を両立させることが可能です。

4. 持続可能な建築への貢献

  持続可能な開発目標(SDGs)に貢献する素材であるため、その特性を活かしてエネルギー効率や環境負荷の低減など、持続可能な建築への取り組みを推進することができます。

現代しっくい『Limore』(リモア)

こちらは、国産の伝統的なしっくいを現代の建築物に適した性能や工法、意匠に合うように改良し、新しく開発されたものです。基本的な製品の考え方やその特徴は、先述のLimixと同じもので

伝統的なしっくいの特性を活かしつつ、現代のニーズに合わせて進化させられており、建築物の外観や内装において美しさと実用性を両立させることが可能です。

また、環境への配慮や持続可能な建築へも視野に入れ、エネルギー効率や環境負荷の低減などに貢献します。こうした特徴から、『Limore』は伝統と革新が融合した、高い評価を受ける革新的な建材として注目されています。

エコロジーとSDGsの観点から

エコロジー観点

自然素材を活用し、環境に配慮した製品開発を行っています。特に漆喰やLimixなどの製品は環境負荷が少なく、建築物に施工することで調湿・消臭・抗菌・不燃性といった優れた特性を持ちます。これらの製品はエコフレンドリーな建材として高く評価されています。

これは、石灰がそもそも植物由来の賜物であるため、長い年月をかけて分解し土へと還ることを思えば理解できることだと思います。

つまり、不必要とあれば解体撤去、粉砕することで、地球環境へと還るため、他の化学物質のように最終処分までの工程がとてもシンプルなのです。

SDGs観点

田川産業の製品は、持続可能な開発目標(SDGs)に貢献する側面があります。特に、CO2抑制が可能なLimixや現代しっくい『Limore』は、建築物の環境性能向上や地球環境への配慮を促進します。

これらの製品は、地球環境への貢献や健康福祉への配慮を通じて、持続可能な開発目標に寄与していると言えます。

人々の暮らしに高いメリットの『しっくい』

実証実験のひとつに、コロナウィルスに対する抗ウィルス性と抗菌性を確認したものがあります。これによれば、他の建築材と比較しても一目瞭然の結果が得られたそうです。「調湿・消臭・抗菌・不燃性」という漆喰の特徴は、私たちの生活に大きな恩恵をもたらすことが裏付けられます。

「しっくい」のぬくもりと質感にあふれた環境は、アレルゲンなどにも効果があるものと考えられています。ハウスダストなどに悩む人々にとっては、とてもありがたい存在です。

漆喰は空気中の花粉やほこりなどの微小な物質を吸収しやすく、これによって部屋の空気中のアレルゲン濃度を低減させる効果があります。

また、調湿機能によって、家の中に生息すると言われる300種類以上のカビの繁殖を抑えます。赤ちゃんや小さなお子さんがいる子育て世代の方々には、この効果によって健やかなライフスタイルと家庭環境をつくることにつながります。

漆喰は表面が微細な孔状構造を持ち、これによって微粒子を吸着・捕捉する性質があります。そのため、漆喰を使用した内装はハウスダストやアレルゲンの浮遊を抑えることができ、アレルギー症状の軽減や健康へのプラス効果が期待できます。

この意味で、住宅の内装を検討している方には、ライフスタイルに漆喰を取り入れ、健康増進のための住環境を整備するにはメリットが大きいということを覚えておいてください。

新築でマイホームをとお考えの方には建築資材として、古くなった住環境のリフォームには建材や壁材に交換するなど、検討してみたはいかがでしょう?

人々の暮らしに笑顔を添える『しっくい』、筑豊の地場産業の一つを支えながら、田川産業株式会社は一歩一歩進化を続けています。

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