平成筑豊鉄道株式会社河合社長が語る「へいちく」の未来

Blog 筑豊見聞録

コロナ禍の終息に道筋がはっきりとしない今日この頃、企業活動も積極的なアクションが取れない状況にあります。

筑豊地方の公共交通機関として、そして地域の人たちの足として重要な役割を担っている平成筑豊鉄道も、それは例外ではありません。そこで今回はあらためて河合社長から、「へいちく」のこれからを聞いてみました。

ことこと列車をはじめとして最近の取組について

ことこと列車

コロナ禍の影響による具体的数値の動向

 中国の方でコロナと騒がれ始めて、その頃から「ことこと列車」のキャンセルが多くなり始めてきまして、その時日本では特に騒がれるようなことはなかったのですが、中国や台湾の方は反応しているんだなと最初はのんきに考えていました。しかし、2年前の冬から急に学校が閉鎖となるなど皆さんのご承知のとおりとなりました。

 学校が閉鎖となると、我々の主なお客様、交通弱者と言われる方の中でも通学で使ってもらえる高校生が乗らなくなり、ほぼゼロとなりました。一方、同じ交通弱者と言われる高齢者の方々も動かなくなって、その時は列車が走っていてもお客さんはゼロというものが多数走っていました。

 それから病院側の対応やワクチンなど、対策がよくなってきて今、だいたい8割くらいの回復と言ったところでしょうか。これはどこの事業者さんも同じような傾向にあるようです。

今後に予定される事業やイベントについて

 この地域の一大イベントである神幸祭が2年連続で中止ということになりまして、我々も今年度のイベント、積極的な活動ができていない状況ですね。ただ、来年の3月で「ことこと列車」は3周年となりますので、コロナの状況が余談を許さないところがありますが、可能であれば皆さんとお祝いしたいと考えています。

 「ことこと列車」につきまして、緊急事態宣言中はそもそも運行を休止していました。直近で言いますとそれが9月に解除され、10月は正直、客足は鈍かったのですが、11月になると定員48名の列車に対し30名様程度の乗車と言ったところでしょうか。それなりにお客様は戻って来てくれたのかなと言った状況です。

 昨年度は福岡県を通じて、沿線市町村などから緊急的な支援をいただきました。それでなんとか会社が存続しているようなところはあります。今年についても支援はお願いしていますが、その辺ははっきりしていないところです。昨年10月の「Go To キャンペーン」が盛り上がりまして、補助金などを活用しながらなんとか黒字ということになりました。

 今年も半分くらいは止まっているようなイメージなんですが、お客様の動きが戻って来てくれるということで収益的にはある程度のところまで行ければなと思っています。ここから先、元通りに戻すということに長い時間がかかると思います。また、完全に戻すというのはまた難しさも違うので、先程8割程度回復と申しましたが、残りの1〜2割の方々の動きはどうなったのかということが今後のカギかなと思いますね。

 一つカギとなるのは、来年入学される新入生の皆さんですね。一部の声として鉄道に乗ることが密につながるのではと懸念されるものがありますが、実際換気は十分だと思いますし、他地域でも鉄道からのクラスターが発生したということは報告がありません。ですので、来年の新入生の皆さんには安心して鉄道を利用してもらいたいと思っています。

油須原駅(赤村)の活用について

 油須原駅はウチの沿線では最も古い駅舎として残っておりまして、比較的(開業)当時の姿が残っていると、一方で一時期店舗も入っていたり、映画のロケにも使われたりとか、地域の方をはじめ訪れた人々も立ち寄る場所として親しまれているところがあります。

 これは推計なんですけれども、どうもこの駅に年間で赤村の人口に相当する人(約3,300人)が立ち寄っているということがあります。昔から赤村の玄関でもあったのですが、近年S N Sなどによりランドマークとして知られるようになってきているなという実感があります。駅というのも普通の家屋と同じで、傷むこともあります。特に木造ということであれば尚の事です。

駅の内部

 使っていれば100年でも200年でも持ちますけれども、何かいい活用はできないかなと思っていたところでした。そんなタイミングの時に、西日本工業大学様の方から駅舎の活用をできないかという意見がありまして、赤村様の方も含め産学官連携で、今の雰囲気を残しながら部分的な改修をしていこうということになりました。ちょうど観光庁が予算を持って、観光であったり、地域活性化であったりという内容を持った駅の改造、イベントの実施について補助をするという制度から、内定をいただきました。その駅舎を使って何をするか、ソフトとハードの両面から取り組んでいこうかと考えています。

鉄道を未来へつなぐために

嘉麻川橋梁(明治期の鉄道橋梁として現役)をゆく「へいちく」

利用客減少に対するアプローチ

 少子高齢化という現実は、現実として受け止めなければなりません。特に私たちの沿線、この地域も国勢調査をはじめとする推計からは、かなり厳しいものであることは間違いありません。そうなると鉄道利用ではどんなことが起きるかというと、鉄道の利用というのは大都会も地方も同じで、朝のラッシュ時に大きく利用客が増え、昼間は少し落ち着きそして夕方にまた朝ほどではありませんが乗り降りが多くなる。

 それでは鉄道のどこにコストがかかっているかというと、朝どれだけ運ぶかということ。乗員がどれだけ必要で、どの車両が必要でということ。少子高齢化になると間違いなく、朝の利用が大きく減っていくということになる訳ですよ。それじゃどこを増やせばいいかというと、谷間のところ(つまり、昼間の時間帯)を増やす分には特に大きなコストはかからないのですよ。平日の昼間、土曜日曜の時間について、利用促進を図ることが効果的ではないかと思います。

 ただ、朝の場合はどうしても行かなくてはいけない。学校に行かなければいけないとか、仕事に行かないとといった動機があります。しかし、それ以外の時間帯はどうしても目的がなければいけない。目的を作っておかないといけない。それを鉄道として提案していかなければいけない。

今後予定される具体的な取組

 具体的なものとして、「ことこと列車」ですね。今は土日しか走っていませんけれど。一列車あたり48名という定員ですが、お客様の単価という部分では通勤、通学の単価の100倍くらいとなります。こういったことに取り組んでいく。これは高価格帯になりますけれど。

 もう一つは、「ちくまるきっぷ」という1日乗車券ですね。1,000円で1日乗ることができて、源じいの森温泉なども利用できます。こう言ったことを提案していって、通勤・通学が減っていく傾向に対し、谷をあげることによって、なんとか経営を保っていけたらと考えています。

 大きな二つとなりますが、コロナ禍になるとまた動きにくくなります。終息を見据えて一から取り組むことになるのではと思っています。

沿線の風景(赤村・内田三連橋梁:国登録有形文化財)

問題点、課題は?

 地方鉄道全体に課題が二つあります。それは先程言った少子高齢化、そしてもう一つは自然災害。南阿蘇鉄道が地震、球磨川鉄道は大水害、そして弊社も赤村、みやこ町といったいちばん景色のいい場所なんですけれども、10年間で3回と頻発していますのでそれにどう対応するか。これがもう一つの大きな課題となっております。

 残念ながら鉄道会社としては、災害を止めることは当然無理な話しであって、鉄道として災害が起こらないような工夫をするとか。起こったとしても、例えば土砂崩れが起きてそこに列車が突っ込むとかしても、日常的な対応として緊張感をもってやっていく必要があると思います。

コメント

タイトルとURLをコピーしました