5月 田川のまつり(山笠にみる文化の違い)

 春は日本各地で祭がおこなわれます。日本は農業を中心として年中行事が習慣化しています。このため、五穀豊穣や天下泰平などその年の実りができるだけ良くなるようにとの思いが、様々な形となって日本各地に伝わります。
筑豊地方でも5月~7月にかけて多くの祭が予定されます。
今回は、比較的早い時期におこなわれる田川のまつり、その中でも山笠が特徴的な神幸祭についてお話いたします。
【1】風治八幡川渡り神幸祭(福岡県指定無形民俗文化財)
 田川で神幸祭といえばまず代表的なものが、風治八幡川渡り神幸祭です。毎年多くの観客を集め賑わいますが、なんと言っても山笠や神輿が川に入り練り歩くところが見せ場です。これには
どんな意味があるのでしょう。
 風治八幡宮は、その由来に神宮皇后(この人物については別の機会にお話します)にちなんだ話があります。それは神宮皇后がこの地にいたった際のことで、風雨が強まって皇后一行が川を渡ることができずにいました。これを憂い皇后が祈祷したところ、たちまち激しい風雨が止んだと言う伝承があります。この伝承にちなみ「風治」八幡宮として信仰をあつめたことからはじまったとされます。
 個人的な意見ではありますが、川渡り行事はこの伝承にちなむことで神宮皇后の神々しい力にあやかっての事として生まれたものではないかと思います。その神通力でもって天下泰平、五穀豊穣を祈る目的があるのではないかと思います。
 ちなみに多彩に彩る山笠は、幟旗を立てバレンで飾るのを特徴としています。これは後に述べる赤村の我鹿八幡神幸祭や光明八幡神幸祭でも同じ様式の山笠であり、行橋市の今井祇園祭の山笠とも共通するものです。
今年の風治八幡川渡り神幸祭は、5月18日(土)・19日(日)に、田川伊田の番田橋付近を主会場としておこなう予定です。
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【2】我鹿八幡神幸祭(赤村指定無形民俗文化財)、光明八幡神幸祭
 先にも少しふれましたが、赤村では下赤では我鹿八幡、上赤では光明八幡が恒例行事としておこなわれます。風治八幡神幸祭で練り歩く山笠と同じ幟旗を立てる様式のものですが、異なるところは「気遣りとり」。
聞きなれない方も多いと思いますが、「気遣りとり」とは、子どもが山笠の前方で踊る所作を言います。これは、近隣地域でも類例が少なく珍しいものです。一度見に来ていただければ、可愛らしい子どもの所作に、何か与えられたような気持ちになります。この起源や意味については調査中です。そのうちにお話しすることができればと思います。
今年の我鹿八幡神幸祭、光明八幡神幸祭はともに、5月4日(土)、5日(日)に開催されます。我鹿八幡神社は下赤の沖代地区に、光明八幡神社は上赤の岡本地区にあります。当日は幟が出ておりますので、これを目印に訪れてみてください。
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【3】糸田祇園山笠(糸田町指定無形民俗文化財)
 この時期に開催される田川のまつりとして、風治八幡川渡り神幸祭とともに著名なのがこの糸田祇園山笠。しかし同じ山笠でも、一目でわかる豪華な装飾が特徴です。糸田町を代表とするまつりとして、町指定無形民俗文化財にもなっております。
 この山笠は、博多系人形山笠とも言われております。城をかたどった中央部の周囲に、武将などの人形を配置しています。山笠の装飾だけを比べてみても、先述の山笠とは大きな違いがわかります。
 また、この山笠を担ぐところがスゴイ。基本は山車ですので、曳いたり押したりするのが普通ですが、ここのヤマは担いで練り歩くところに心が震えます。俺も担いでみたいなと思わせる魅力があります。地元の人たちの粋なところや絆が感じられます。
 補足ですが、糸田祇園山笠に登場するヤマは輪もあります。担ぐばかりではなく、曳いたり押したり回したりという所作もあります。その様子は主に糸田町の中心部にある、フェスティバルパーク糸田(糸田町2404番地)で行われる競演会にてご覧になれます。
 毎年3万人近い観客で賑わう糸田祇園山笠は、今年5月11日(土)・12日(土)に行われる予定です。
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【4】伊方山笠
 もうひとつこの時期に催される田川のまつりとして知られるのが伊方山笠。こちらも先に記した糸田祇園山笠と同じ博多系人形山笠です。
こちらのヤマは担がれることはありませんが、競演会場やその他広い場所で、旋回する練りがみられます。また、ヤマ同士のケンカもおこなわれ盛り上がります。主な競演会場となる福智町公民館方城分館前広場に、旧方城町内地区の山笠多数が集う様子は圧巻です。
伊方山笠は5月3日~5日にかけておこなわれ、白装束に身を包んだ男衆と山笠の練り歩きは時として清清しく感じられます。赤坂・白髭神社に戻ろうとする神輿を、山笠が阻もうとする様子は一見に値しますよ。
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【おわりに】
 さて、長いお話になりましたが、今回の山笠特集でその違いを意識して観てもらえば、一味違った楽しみ方ができます。同じ田川地域にありながら山笠の様式が違うところや、細かな所作や練りに違いがあることをおわかり頂けたのではないでしょうか。
 このような見方で今年の春の田川のまつりを堪能していただければと思います。どうぞお楽しみください。

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